製版について

製版(Plate making)とは印刷工程の前段階の非常に重要な工程のことをいいます。

印刷物は大量部数を印刷する事もあり、本番の印刷をおこなう以前に、印刷するべき内容や文字、写真などレイアウトも含めて完全な原稿にする必要があります。
その過程を製版工程といいます。

ここでは製版業務について、重要な要素や工程をそれぞれご紹介していきます。

目次

製版業務について

製版業務は冒頭で説明した印刷の前段階の工程の事をいいます。

製版業務は印刷する際にPlate(版)を印刷機にセットしますが、そのPlate(アルミの板)を作成します。

一般的なカラー印刷は4つの色(CMYK)C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)k(ブラックの4つの基本的な色を掛け合わせたり濃淡をつけたりして色の再現性を表現します。

この4つの色にそれぞれPlate(版)が存在し、CMYKの4つのPlate(版)を相違なく作成する事が製版業務に基本となります。   

CMYK4つの色

製版業務の工程について

  1. トンボ作成・塗りたしの説明
  2. ケヌキ処理・オーバープリントについて
  3. 面付作業について
  4. 写真画像の色補正および画像処理加工

トンボ作成・塗りたしの説明

トンボ作成とは製版業務や印刷において非常に重要な要素です。
 
トンボとは印刷物(チラシやポスターなど)のサイズを決定するものでトンボの位置が印刷物の仕上がりサイズを意味します。
4角にトンボ―マークが入り、センタートンボと呼ばれるトンボも存在します。

センタートンボは印刷物の中心になるように設定されており、何種類もの印刷物を丁付け(いくつも同じものを配置する)したり、面付作業(本にする為にページ組みする)を行うときに必要となります。

塗りたしとは印刷物を仕上げる際に、トンボで断裁をおこないますが、その際に余白とよばれる部分の事を指します。

断裁は精密にトンボの内側で仕上がりサイズに沿って行われますが、時に若干のズレが生じたり、紙が厚い場合などトンボの仕上がり線より外側や内側に断裁がズレる事もあります。
その場合に余白がないと紙自身の白が出てきてしまいます。


印刷物を仕上げた際に、違和感が生じます。

塗りたしと呼ばれる余白は通常3㎜の幅が多く、4角のトンボにそれぞれ必要となります。

印刷物を見栄えよく仕上げるためにも塗りたしはデータ制作の上で必ず作成する必要があります。


ケヌキ処理・オーバープリントについて

次は製版のおけるケヌキ処理とオーバープリントについて説明します。

ケヌキ処理とは文字と背景を重ねたときに文字の色がそのままの文字色で表現される事を言います。
分かりやすく説明しますと、文字の色が赤色の時に背景の色が青色の場合、その文字の形で背景色をピッタリと抜き取ることとなります。

少しでも、文字の位置がズレると抜き取った部分の白が出てしまいます。それを解消するためにCMYK4つの版のトンボで位置をしっかり合わせてズレを解消する必要があります。ケヌキ処理 『髪の毛1本の細さもピッタリと合わせる事』を指し、製版用語でよく使用されています。

 

では次にオーバープリントの説明をします。

オーバープリントは通常スミ文字(黒文字)などケヌキ処理(背景を抜く)しない場合、対象となるオブェクトの上に重ねて表現する事をいいます。 説明文や細かい文字など黒で表現されている場合、通常背景色よりも黒文字の方が濃度が強いためわざわざ文字の形で背景色を抜いたりしません。背景色を抜くことにより、白が出てしまうリスクの方が遥かに高く、製版・印刷工程において、スミ文字と呼ばれる(黒文字 black)は基本的に背景や写真のオブジェクトの上に乗せて表現します。

ただし、オーバープリントの処理によって下にあるオブジェクト色の影響を受けますので、通常の黒よりも濃くなってしまいます。背景色などの色が濃い場合はもともとのスミ文字の黒の色はより深く濃厚な黒で表現されます。このような黒色(BK)+他の色(CMY)が混ざる事をリッチブラックと呼びます。


オーバープリントの影響でデザイン的に写真や背景色と被っている箇所と被らない箇所ではスミ文字(black)の色の濃さが変化します。
文字が大きく表現されている場合は色の段差が目立ちます。デザイン処理される際にこの段差が嫌われる事もあります。

リッチブラックの説明事例
オーバープリントによる文字濃度の段差事例

モニター上では色の段差区別がつかず、分かりにくいとは思いますが、実際印刷物で紙面上で確認すると違いがはっきりと分かります。

面付作業について

面付作業について説明します。面付作業とは一体何か? まずはそちらから説明致します。

面付け作業とは、製版工程において重要な工程の一つでありパンフレット印刷を例にあげてみます。

パンフレットは基本ページ毎に印刷されているかと思います。(あたりまえの事ですが…) 表紙から始まり、P1、P2、P3…………P20という感じでページ順に印刷され、本や冊子になり印刷物として出来上がります。そのページの順番通りになる様に組み替えていく作業が面付作業となります。この作業で間違いが起こると本になりません。P3の次は当然P4ですが…これが突然P7に飛んでしまえば…… 読み物として成立しません。そのような状況を回避するために印刷する前段階で面付作業を行う必要があります。

印刷された紙は折り加工という工程に入ります。折り加工は面付された印刷物を機械で順番に折り込み、最後に製本機でホッチキス止めや糊付け等をして最終的にパンフレットや本に仕上げます。面付作業はページ順になるように製版工程でレイアウト調整を行います。 パンフレットのようなページ印刷物は通常4P単位で構成されます。 4P、8P、16Pの単位で面付作業は行われます。その面付作業のレイアウト調整は折り加工や製本工程に準じて行います。

写真画像の色補正および画像処理加工について

ここではパンフレットやチラシで使用される写真画像について説明します。

製版工程において写真画像の色補正や切り抜き、合成などの画像処理は技術的なことも踏まえて非常に重要です。際立つパンフレットやWEB画像などを作成する際に必要となる工程です。

写真画像は人物や風景をはじめ商品など様々な画像が存在します。特にモデルや自社の目玉商品などを写真画像として印刷物に使用する場合は画像の解像度やシャープさが重要となります。さらに商品や人物(モデル)の色調も目を惹く重要な要素となります。製版工程でこのような写真画像の色補正を行うことにより、商品や人物が引き立ち強調されます。 最近ではほぼすべて撮影された写真画像はデジタル画像として扱われ、カメラマンや個人のスマホなどで撮影された写真画像を使用することが多くなりました。 では画像の質を決める解像度とは一体何かを説明します。

画像解像度とは

画像解像度とは画像の質を決めるものであり、高ければ画像の質が上がります。精度が高くなるとも言います。一般的な解像度表記はdpiという単位で表現されます。72dpi、150dpi、350dpiなどと表現されます。 画像のサイズに対してどのくらいの解像度があるかで写真画像がシャープに見えたり、ややぼけ気味に見えたりします。画像は拡大してPCのモニターで見ると小さな点の集合体として見えます。この集合体がドットと呼ばれるものであり、俗に1インチ(2.54㎝)内にどのくらいのドット(点)があるかで精度が決まります。

72dpiは1インチ内に72のドットの集まり  350dpiは1インチ内に350のドットの集まりという感じになります。

当然350dpiの方が画像の1インチ内にある密度が高いため、高画質になります。 いわゆる高解像度の画像データとなります。では何故350dpiかというと、印刷物には線数というものがあり、一般的な印刷物は175線という指定で印刷します。印刷物は小さな網点の集合体で色を表現しますのでこちらも1インチ内に175個の網点があるものが175線となります。 製版・印刷業界での常識として線数の2倍の解像度が必要とされ、175線の2倍で350dpi解像度があれば高画質な画像として表現されるということになります。 もちろんこれが300dpiや250dpiでもさほど画質に影響はありません。ただ低画質の例として72dpiの解像度は低解像度と呼ばれており、印刷物で表現する場合はよほど小さなサイズで扱う以外は画質的にお薦めできません。ボケたり粗くなったりとして印刷物として見栄えが悪くなります。 解像度が低いといくら写真画像の色補正をして美しく表現しても、もともとの画質の悪さが際立ち見栄えが悪くなってしまいます。

このサイトでは印刷の前工程である製版や印刷に関わる豆知識をご紹介しております。

法人向けにはデザイナーの方や印刷発注窓口のご担当者様に役立つ情報をご提供しております。
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この記事を書いた人

製版・印刷関連の営業職を20年以上続けており、
日々の仕事で経験した色々な知識やエピソードを紹介していきます

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