印刷をおこなう前に必要な“校正”という言葉をよく耳にしませんか?
校正とはチラシやパンフレットの制作で誌面上の内容に誤字や脱字が無いかを確認したり、修正がある指示原稿と照らし合わせて内容を照合することを言います。
校正について詳しくは下記にて
校正とは Webio辞書 校正より引用
今回のテーマは校正に関してとなりますが、その中でも製版業務における色校正についてご紹介していきます。
では色校正って何?ということになりますが、色校正は実際印刷物を大量に印刷する前に文字やデザイン、写真の色なども含め、できる限り仕上がりの印刷物に近い形で内容確認をおこなうことを言います。
色校正は大きく分けますと、簡易校正と本紙色校正と2つが存在します。
このテーマではこの2つの違いとメリット、デメリットを分かり易く伝え、デザイナーや印刷発注担当者の方が的確に指示がだせるようにご紹介します。
●簡易校正と本紙色校正との違いについて
●簡易校正のメリットとデメリット
●本紙・本機色校正のメリットとデメリット
●発注の際のアドバイス
簡易校正と本紙色校正の違いについて
ではまずは簡易校正と本紙色校正の違いについてご紹介します。
簡易校正とは簡易という文字からもご想像できますが、要はインクジェットのプリンターで出力した内容物のことをいいます。デザイン制作で一旦内容が校了(ひとまずOK)した後に、製版工程(印刷する前工程)に入ります。
製版工程では、デザイン制作で入稿された印刷データを、より印刷物に近い感じで校正をあげますが、インクジェットプリンターで出力したものが簡易校正となります。
デザイン制作段階では校正はPDFやカンプ出力(コピー用紙のようなものにプリンターで出力)が基本となりますが、簡易校正は実際印刷した色や内容に割と近いものとなりますので、写真の色などもカンプ出力やPDFの時と比較して印刷物に近くなります。
簡易校正は疑似的に印刷物に近い専用紙(プルーフやデジタルコンセンサスと呼んでます)で出力したものをクライアントへ提出して色や内容の最終判断に活用しています。
次に本紙色校正とはどのようなものかと言いますと、実際の印刷する本番の紙と同じもので印刷を行います。実際にインクをつけて印刷をすることになりますので、紙の雰囲気や厚み、印刷物がどのような色目で仕上がるかを確認できます。
更に深く話しますと本紙色校正と本機色校正とにも分類されます。本機色校正は実際本番で印刷をおこなう印刷機で刷ります。あくまで確認用の色校正なので枚数は少なくなりますが、実際の印刷を想定したものとなりますので、ほぼ同じ仕上がりとなります。
これとは別に平台の校正機というものあります。これはミニ印刷機のようなもので、本紙色校正のみを印刷する専用の機械です。昔は製版会社や校正屋さんと呼ばれる会社が多数あり、色校正と言えばこのミニ印刷機とも呼ばれる校正機で刷って色校正をあげておりました。
実際の印刷機との違いはいインクローラの回転数がゆっくりと動きますので、インクの付き具合が違いますので若干ではありますが、本機と呼ばれる印刷機と微妙な色の違いは生じます。ですがこちらも本紙でインクをつけて印刷しているので、当然簡易校正よりも本番に近い仕上がりとなります。
簡易校正のメリットとデメリット
ここでは簡易校正を利用した場合のメリットとデメリット双方をご紹介します。
ずばり2つのメリットとなります。1つは費用面です。
簡易校正は前述でお伝えしましたように、インクジェットプリンターの専用紙で出力します。よって専用紙の費用と製版作業するオペレータの人件費、最後にインクの費用となります。
設備を持っている製版会社や印刷会社にもよりますが、殆どの会社がサイズで金額設定をおこなっており、1枚での費用設定となっています。後に説明しますが、本紙色校正や本機色校正は元となる版(プレート)の出力が必要となりますが、簡易校正はダイレクトにプリンターからの出力が可能な為、版の費用がかかりません。
2つ目は納期面で本紙色校正や本機色校正より早く納品できます。
本紙色校正や本機色校正が版の出力等の時間がかかるのに対して、簡易校正は製版業務終了後、データを機械に送れば大型のプリンターによってすぐに出力がおこなわれます。よって本紙で校正をあげるより、短納期で簡易校正が納品できます。
簡易校正を利用する上でのデメリットについてご紹介します。
1つ目は本紙校正ではない為にシビアな色の確認ができないことが挙げられます。
簡易校正は多くが専用のプリンターから出力する光沢紙やマット紙などが多く、基本はインクジェットでの表現となります。
各印刷会社や製版会社がカラーマッチング※をおこない、ある程度印刷インクに合うように色管理の設定をおこなったりはしておりますが、実際の印刷インクではありませんので色調の差異はどうしても出てしまいます。
※カラーマッチング…主にモニターの画面色とプリンターで出力した色を合うように調整すること ここでは印刷機のインクに簡易校正で出力した色目を近づけるように色の濃度や補正管理をおこなうこと
特に色濃度の濃い濃紺や茶や黒系統は色が変わって見えたり、弱く感じたりすることがあります。
写真画像の多いパンフレットやデザイン要素の強いインパクトのある印刷物は色の再現性が重要視されます。その為に簡易校正ではある程度の色確認はできますが、シビアな色の確認は得意とは言えませんので、注意が必要です。
2つ目は本紙ではないので、紙質や厚みなど本番の印刷用紙を想定できない。
簡易校正で使用する紙は印刷用の本紙ではありませんので、実際の印刷物として納品される紙のイメージができません。
印刷物の多くがコート紙やマットコート紙で印刷されていることも多くなりますが、上質紙や特殊紙などはインクの沈みや付き具合がかなり変わりますので、まず簡易校正との色目のギャップが生じます。
また紙の厚みも本紙ではありませんので、どのくらいの厚みで印刷物として納品されるのかも確認ができません。印刷用紙が薄くなると裏移り(裏面の印刷内容が透けて見える)が強くなることもありますが、そのような確認が簡易校正ではできません。
それを避けるには簡易校正と一緒に印刷用紙の見本帳で確認して、本紙の確認をおこなう必要があります。
本紙・本機色校正のメリットとデメリット
では本紙色校正ではどうでしょうか。こちらもメリットとデメリットをご紹介させていただきます。
先程の簡易校正とは逆になる感じとなりますが、本紙で色校正をおこなうメリットの1つ目はシビアな色の確認ができるということです。
実際に使用する印刷用紙での校正となりますので、シビアな色の確認も本紙色なら確認することができます。本機色校正であれば、尚更同じ印刷機で校正をおこないますので、より本番との信憑性はアップします。
会社ロゴや新商品のシビアな色確認、写真集のような写真がメインのような印刷媒体は後々の事を考えると、本紙色校正をおこなう方が賢明といえます。簡易校正では上手く表現しきれない濃度部分も本紙であれば表現ができますので、クライアントへの確認もスムーズにおこなうことが可能です。
2つ目は実際の印刷用紙での色校正となるので紙の厚みや質感も確認できるということです。
ここも簡易校正にはない特徴といえます。実際の本紙を使用する事になりますので、紙の風合いや特徴、厚みも色校正段階で確認が可能となります。特に特殊紙を使用する場合は厚みなども実際の想定していたものと違う事もありますので、本紙色校正をおこなう事で、確認がスムーズになります。
ではデメリットをお伝えしていきましょう。
簡易校正と比較となりますが、1つは費用がUPする事です。
簡易校正は先述しましたように、インクジェットプリンターで1枚づつ出力をしていきます。その際にはデータからダイレクトに出力が可能となります。本紙色校正をおこなうにはこの間に版と呼ばれるアルミプレートを出力する必要があります。
実際に仮でテスト印刷をおこなう事となりますので、印刷用紙も必要となります。更に印刷費用(校正費用)も加わり簡易校正と比較するとかなり金額はUPしてしまいます。1枚もののチラシやポスターであれば、それほど大きな価格差はでませんが、ページ数があるパンフレットになりますと、かなり簡易校正とでは価格差が生じてしまいます。
簡易校正の場合 インクジェット出力したサイズと枚数が費用となります。 サイズ単価×枚数
本紙・本機色校正の場合 版費用(カラーの場合4版分)+紙費用+印刷費用(カラーの場合4色分)
予算取りが厳しい印刷媒体であれば、本紙色校正は割高となりますので、十分に検討が必要となります。
実際どのくらいの差額がでるかは、製版会社や印刷会社さんへ双方の見積をお願いして確認した方が良いと思います。各会社によっても価格設定が違いますので、事前に確認は必要となります。
2つ目は納期面で簡易校正より日数がかかります。
本紙色校正や本機色校正では簡易校正と比較しても日数がかかります。よって短納期で動かす印刷媒体では不向きと言えます。製版業務終了後、版(プレート)の出力、紙の手配や納入、そして印刷する時間も要しますので、単純比較でも一般的には簡易校正より2~3日は納期を要します。
特にパンフレットなどのボリュームのある印刷物は印刷台数が増えると、費用面と同様に納期も更に必要となりますので、こちらもお願いする製版会社や印刷会社さんへ事前に確認が必要となります。
発注の際のアドバイス
では実際に色校正を製版会社や印刷会社へ発注する際のアドバイスを簡単にご説明致します。
広告代理店や制作会社、または企業のご担当者の方々がスムーズに判断できるようにまとめてみました。
予算が厳しい場合やポピュラーな紙質で印刷する場合は簡易校正で十分
一般的なコート紙やマットコート紙で最終印刷を予定される場合は簡易校正で十分だと思います。
特に商品画像や会社のロゴやブランドロゴがそれほどシビアではない場合も同様です。簡易校正でもある程度の色目は確認できますので、仕上がった印刷物とギャップがそれほど大きく生まれるわけではありません。また予算が厳しい場合は簡易校正の方が断然お得と言えます。
特殊な紙質の場合や色の重要性が高い場合は本紙色校正がベスト
本番の印刷用紙が特殊な紙を使用する場合は、簡易校正では紙質が大きく違いますので、印刷した仕上がり具合にギャップが生じます。ヴァンヌーボ紙やライトスタッフ紙などラフ調で特有の風合いのある紙質などは実際に印刷したイメージが変わることもありますので、本紙色校正や本機色校正がおすすめとなります。
特に企業内で上層部まで内容確認が必要な印刷媒体は本紙色校正をおこなっていた方が後々にスムーズではないでしょうか。確認したものが実際と相違があれば、双方でクレームの対象にもなり兼ねませんので、十分注意が必要です。
また特殊な紙でなくても、パンフレットで使用する新商品の写真やポスターで全面に写真画像がある場合は本紙色校正を選択しても良いかと思います。ここ一番で印刷媒体をしっかり作成したい時には、時間と費用を惜しまず本紙色校正をする方が良いかと思います。
オーバープリントやモアレの確認は本紙色校正の方が分かりやすい
少し専門的な事になりますが、印刷誌面の中で、オーバープリントやモアレという現象が生じることがあります。
オーバープリントとは通常スミ文字(黒の文字)は他の色の影響を受けない為に、オブジェクト(対象物)に対して上から文字等を載せます。これをオーバープリントと言いますが、時には背景に何もない白の状態と色がついたオブジェクトで比較すると、同じ黒の色でも下地に色がある場合と無い場合では色の濃さに変化がでてしまいます。この変化が段差のような色ムラに見えることもあります。
このような場合は簡易校正でオーバープリントの発見が難しく、気づかずに印刷を行ってしまい本番印刷で気づくことも多くなります。本紙色校正であれば、実際にインクを載せて印刷することになりますので、校正段階で発見が可能です。
モアレに関しても、同様で簡易校正では発見できないことも多く、本紙色校正で分かることもしばしばあります。
モアレとは簡単に言いますと、細かい柄やストライプ柄など、過剰に小さい範囲に網点が集合すると、網点自体が干渉し合いおかしな柄に見える事があります。印刷物は網点の集合体となっており、規則正しい角度でCMYKの網点角度が割り振られておりますので、過剰に点が集まる部分は綺麗に描写が出来ないこともあります。その現象であるモアレを発見するには、やはり本紙色校正で実際にインクで印刷した場合に発見が可能となります。
少し専門的な話になりましたが、品質重視でシビアに校正物を判断するには、簡易校正より本紙色校正を選択する方がベストになります。
まとめ
今回は印刷物に関する色校正に関する内容を説明してきました。その中で簡易校正と本紙色校正との違いやメリットとデメリットに関することもお伝えしてきました。まとめで簡単に今回内容を整理させていただきます。
●簡易校正
インクジェットプリンターで出力したもので専用紙にプリントアウトをおこない、印刷物の内容確認をおこなう
●本紙色校正と本機色校正
実際に印刷される紙と同様の紙を使用して色校正をおこないます。本機色校正は更に本番の印刷機で色校正をおこない色校正と本番印刷物のギャップを無くす為におこないます。
簡易校正や本紙・本機色校正のメリットとデメリットについて
簡易校正や本紙色校正は状況やオーダー応じて使い分ける事が重要です。限られた予算や納期の中で、簡易校正と本紙色校正を上手く使い分けて、無駄なくまた納得のいく校正物を選択することで、印刷物の発注がスムーズにおこなわれるのではないかと思います。
今回は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。