今回はポスター印刷での紙選びと注意点をご紹介していきます。
街中や駅でよく見かけるポスターですが、実際どのような紙質で印刷されているのでしょうか。
ポスターは大判サイズで掲載されることが多く、A1サイズ(841×594㎜)B1サイズ(1030×728㎜)など非常に大きなサイズで迫力があり、見栄えが非常に重要です。
- ポスターでよく使用されている印刷用紙の代表的な2つを紹介
- 選挙ポスターで使用されている紙の紹介
- ポスター印刷の注意点
- 枚数が少ない場合はオンデマンド印刷がベスト
まずはポスターで使用頻度の高い印刷用紙をご紹介していきます。
ポスターで使用される代表的なコート紙とマットコート紙
ポスター印刷でよく使用される代表的な紙質は“コート紙”と“マットコート紙”が挙げられます。
チラシやパンフレットの紙質でも紹介したコート紙やマットコート紙はポスターでも人気のある紙質となります。
特にポスターは大判サイズで印刷されることも多く、紙の厚みでは4/6判サイズの135㎏がポピュラーとなります。サイズが大きい分、それ以下の紙質では厚みとして薄く感じ、ペラペラした頼りない仕上がりになりますので、特にB2サイズ以上は135㎏以上で使用されることが殆どとなります。
もちろん135㎏以上の160㎏や180㎏といった厚みでもポスター印刷で使用されることもあります。ただ紙が厚くなれば、紙の費用が上がりますので注意が必要です。
あとコート紙より、より白く且つ光沢感がコーティングされているアート紙もポスターには最適です。
アート紙はコート紙より塗工されている塗料が多く、より鮮やかな表現となりますので、写真メインのポスターには特におすすすめできる紙と言えます。ただ紙のグレードも高くなりますのでその分費用も高くなります。
ポスターサイズ | コート紙(厚みの目安) | マットコート紙(厚みの目安) |
---|---|---|
B0サイズ(1456×1030㎜) | 135㎏~180㎏ | 135㎏~180㎏ |
A0サイズ(1189×841㎜) | 135㎏~180㎏ | 135㎏~180㎏ |
B1サイズ(1030×728㎜) | 135㎏~180㎏ | 135㎏~180㎏ |
A1サイズ(841×594㎜) | 135㎏~180㎏ | 135㎏~180㎏ |
B2サイズ(728×515㎜) | 135㎏ | 135㎏ |
A2サイズ(594×420㎜) | 110㎏~135㎏ | 135㎏ |
B3サイズ(515×364㎜) | 110㎏~135㎏ | 110㎏~135㎏ |
A3サイズ(420×297㎜) | 110㎏~135㎏ | 110㎏~135㎏ |
B4サイズ以下 | 90㎏~135㎏ | 90㎏~135㎏ |
基本は135㎏の厚みがあればOKですね。
あくまで目安になりますが、マットコート紙はコート紙と比べて同じ厚みでも少し紙のコシがないと言いますか、薄く感じることもありますので、135㎏の厚みがあれば問題ありません。
コート紙は艶やかな光沢感がありますので、目立ち易くインクの付きも良いので印刷しやすい紙となります。マットコート紙もコート紙ほどの光沢感はありませんが、ほどよく光沢感があり、少し落ち着いたイメージとなります。
選挙用ポスターで使用する紙
ここでは選挙用ポスターで使用する紙をご紹介します。
選挙が近づくとよく目にする選挙用のポスターですが、事務所内に掲載したりもしますが、多くは屋外に掲載する例が殆どとなります。その為に通常の商業用で使用するコート紙やマットコート紙ではなく、選挙用として印刷する用紙として代名詞とも言える紙が“ユポ紙”となります。
ユポ紙について
ユポ紙とはどのような紙でしょうか。またその特性についてご紹介していきます。
ユポ紙は合成紙の種類となります。合成紙とは石油から精製された合成樹脂を原料としたものであり、代表的なものとしてはポリプロピレンが主原料となります。コート紙などとは原料が違いますので、特性にも違いがあります。
ユポ紙の特徴と選挙ポスターに向いている理由
ユポ紙の特性はまずは破れにくいことと、雨などの水にも耐性があるという事が挙げられます。
屋外で掲載されることが殆どとなりますので、耐水性があるということは必須の条件となります。また破れにくいことは、風が吹いた時にも強く、合成紙の特性上表面が伸び縮みする素材でもあることから、強度もあります。
更には環境面でも配慮した点がいくつかあります。製造工程においてアスベスト等の有害物質や環境負荷物質を使用しておらず、廃棄に関してもリサイクルの観点から再び原料に使用されることもあり、環境を考える社会に適した紙といえます。
表面も滑らかであり、印刷適性も良く選挙ポスターの顔写真も綺麗に印刷できるのが強みでもあります。以上のことから屋外で掲載される選挙ポスターとして優れた特性を兼ね備えた紙といえます。
ユポ紙の特徴について
屋外で掲載する選挙ポスターはユポ紙で対応することが
おすすすめですね。
ユポ紙を使用する場合はUV印刷がおすすめ
では実際ユポ紙で印刷することになった場合はUV印刷がおすすめとなります。
UV印刷とは使用するインクがUVインクとなります。オフセット印刷ではありますが、通常の油性のインクではなく紫外線を照射することでインクを硬化させ乾燥させる特性があり、選挙ポスターではよく使われています。
ユポ紙は優れた特性を兼ね備えた紙ではありますが、乾きにくい要素もあり、UV印刷をおこなうことで、速乾性が生まれ納期短縮にも繋がります。特に短納期の場合やベタが多い場合にはおすすめしたい印刷方式です。
ポスター印刷の注意点
ポスターのサイズや紙質などを今までご紹介してきましたが、今度はポスター印刷の注意点をいくつかお知らせ致します。
- 屋外で掲載するポスターはカラー印刷ではインクが色褪せしてしまう
- サイズが大きいので、画像サイズと解像度は注意が必要
- B1サイズ以上は印刷できる会社が少ない
インクが色褪せるってどういう事でしょうか?
屋外で掲載するポスターはカラー印刷ではインクが色褪せしてしまう。
屋外で掲載されるポスターは直射日光を浴びますので、紫外線の影響で色褪せをおこします。
ポスターを屋外で掲載する場合、特にカラー印刷をおこなうことが殆どだと思います。カラー印刷はCMYKの4つのインクがそれぞれ掛け合わされて印刷されます。その中でY(イエロー)とM(マゼンタ)というインクは成分の関係で色褪せが他のC(シアン)やK(ブラック)より強くなります。紫外線によってインク顔料の分子が壊れてしますのが原因です。
その為にY(イエロー)とM(マゼンタ)の色が抜けた状態となり、C(シアン)やK(ブラック)の2色で印刷したようなポスターになってしまいます。よく街中でもそのような色褪せたポスターを見かけることはないでしょうか。
対応策としましては、1つは耐光性のインクを使用することが挙げられます。耐光インクは通常の印刷インクよりも、紫外線に強い成分を使用しており、色褪せを抑える対策となります。この耐光インクはY(イエロー)とM(マゼンタ)インクのみとなりますので、ある程度の期間屋外でポスターを掲載する場合は耐光インクの使用をおすすめします。
ただあくまでも通常インクより耐光性が強いという事であり、完全に色褪せを防ぐという訳ではありませんので、ご注意ください。
2つ目としては、ポスターにUVラミネート加工をおこなうことで紫外線から守ります。紙に透明のフィルムを貼り付けるラミネート加工は価格面で上昇はしますが、対応策としては効果的です。また表面保護の観点からも、キズや少々の雨などにも耐久性がありますので、予算に余裕があれば活用してみてはいかがでしょうか。
インクの耐光性って初めて聞きましたが、色褪せを抑えるには耐光性インクやUVラミネート加工が有効ですね。
サイズが大きいので、画像サイズと解像度は注意が必要
次に注意すべき点は、印刷物で使用している写真画像のことにふれておきます。
ポスターは先般でも説明しましたが、大きなサイズA1サイズやB1サイズ、それ以上のサイズで掲載することもあります。
印刷物サイズが大きい為に、チラシやパンフで扱う画像サイズよりも大きくなります。中にはポスター全面フルに写真画像が掲載されているものもあります。
そこで画像サイズに応じた解像度が必要となります。通常印刷物では350dpiの解像度が一般的と言われております。ただよく見られるパターンとしては、A4チラシで使用した画像をポスターでも使用する場合、チラシサイズでは問題なく綺麗に画像が印刷されていますが、これが大きなポスターにそのまま使用すると拡大率の限界でかなり粗く表現されてしまいます。
チラシやポスターで同じ写真画像を使用する場合、解像度が媒体に適しているかが重要となります。
画像が350dpiの解像度があっても、チラシ用に小さいサイズであれば、ポスターでは画質が維持されない事があります。同じ画像でもポスターで使用することが分かっていれば、あらかじめポスター用の大きな画像サイズで使用する方がベストです。
ただあまり画像サイズが大きいとデータ制作上、容量が重くなることもありますので、同じ画像でもサイズをチラシ用とポスター用に仕分けて作成することも方法の1つと言えます。
B1サイズ以上は印刷できる会社が少ない
3つ目の注意点はB1サイズ以上のポスターは印刷する会社が限られており、どこでも印刷できるわけではありません。
印刷会社にある印刷機は幾つか種類がありますが、大抵は小さなDMやチラシが印刷できる半裁機かA1サイズより少し大きなサイズまでが印刷できる菊全機が多くなります。B1サイズのポスターを印刷するにはオフセット印刷では4/6全般機というかなり大きな機械しか印刷はできません。この機械はどの印刷会社でも自前で持っている訳ではありませんので、注意が必要です。
特に納期があまりない場合は事前に印刷できる会社を把握し、印刷状況の混み具合なども考慮にいれて、余裕を持ったスケジュールで進行する必要があります。どこでも印刷できるチラシやDMのようにいかない場合もありますので、注意が必要です。
なるほど、B1サイズはどこでも印刷できる訳ではないのか…
これは覚えておいた方がいいですね。。
枚数が少ない場合はオンデマンド印刷がベスト
ポスター印刷では大判サイズで印刷することをお伝えしてきました。告知ポスターや宣伝用のポスターなど用途はそれぞれですが、発注する部数が極端に少ない場合はオフセット印刷よりもオンデマンド印刷がベストとなります。
オフセット印刷ではある程度の部数までは同じ単価で費用がかかりますが、オンデマンド印刷では枚数に応じて金額が変わりますので、10枚~50枚程度の部数であればオンデマンド印刷の方が安くなることもあります。極端に言えば1枚でも印刷可能となりますので、短期間で少部数の場合はオンデマンド印刷に切り替える方がお得といえます。
最近では部数の少ないポスター印刷も増えてきました。
オンデマンド印刷は状況に応じて使い分けると効率的です。
●部数が少ない(1枚~50枚まで)場合はオフセット印刷よりも費用が安くなる。
●ポスターの種類が複数あり、かつそれぞれの部数が少ない場合も費用面でお得になる場合がある
●インクジェット方式のタイプが多く、納期面でも短縮できる場合がある
●大判出力がメインとなるので、出力サイズはオフセット印刷よりも幅がある。(A0、B0サイズも対応可能)
状況に応じてオンデマンド印刷に切り替えるのがベストではないかと思いますが、オフセット印刷と違い印刷での色の調整等が出来ないことも多く、シビアな色調やこだわった特殊紙を使用する場合はオフセット印刷で印刷する方が良いこともあります。
オンデマンド印刷については別記事でもご紹介しておりますので詳しい内容はご参照ください。
まとめ
今回はポスター印刷について簡単にご説明してきました。紙の種類や選挙ポスターなど用途が限られている場合の対応などを紹介してきました。内容で重要な事をまとめてみましたので、おさらいしてみましょう。
ポスター印刷での紙選びと用途
●ポピュラーな紙質はコート紙やマットコート紙が人気で厚みは4/6判サイズの135kgあればOK
●選挙ポスター用には屋外仕様に強いユポ紙を選択するのがベスト
●ユポ紙で印刷する場合は納期短縮もふまえて、UV印刷がおすすめ
ポスター印刷での注意点
●屋外では紫外線の影響で色褪せてしまうため、耐光性インクやUVラミネート加工での対策が必要
●画像サイズはポスターサイズに合わせて調整し解像度も350dpiを目安にする
●オフセット印刷でのB1サイズ、それ以上の大きなポスターは印刷できる会社が少ない
少部数はオンデマンド印刷がベスト
●発注部数が少ない場合(1枚から可能)オンデマンド印刷が納期面や費用面でもお得
●種類が複数ある場合もオンデマンド印刷では効果的
●大判出力ができる為、ポスターサイズが大きくても出力対応が可能
簡単ではありますが、ポスター印刷での紙選びから注意点などをまとめてみました。
ポスターはチラシやパンフレットと同じぐらい注文数も多く、
且つインパクトを与える印刷物ともなりますので、紙選びや
仕上がり具合には気をつけて発注する事が重要ですね。
今回は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。