製版や印刷の専門用語でもありよく使用されるオーバープリントという言葉があります。
今回はこのオーバープリントについてどのようなものか、ご紹介していきます。
オーバープリントって印刷した時にたまに聞きますが…
はっきりした意味を知りませんね。。
オーバープリントは印刷時にとても重要な要素を含んでいますよ。
●オーバープリントとは
●オーバープリントでの注意事項
●入稿時のオーバープリントチェックと解除
●まとめ
オーバープリントとは
では印刷時によく使用されるオーバープリントとは一体なんでしょうか?
オーバープリントとは色を重さねて印刷する事を言います。文字や図形など印刷物では前面の絵柄と背面の絵柄が重なる事はたくさんあります。その際に重なった色同士が混ざり合い別の色になります。
左図では前面の色と背面の色が重なる部分で色が変化します。
このように上から色を重ねて処理することをオーバープリントと言います
スミ文字は基本的にはオーバープリントをする
印刷物では多くの場合スミ文字と呼ばれる文字などは基本的にはオーバープリントの処理をかけることが一般的です。
これはスミ文字と呼ばれる黒文字は他の色に負けない濃度を持っている為に、上から重ねても色が影響しない為に、スミ文字はオーバープリントとして処理されます。
このようにスミ文字をオーバープリントすることを印刷用語では『スミノセ』と呼んでいます。
基本的にはスミ文字と呼ばれる文章などはオーバープリントで処理しないと、版ズレというリスクが出てしまいます。
スミ文字はオーバープリントしないとリスクが高い
では逆にスミ文字をオーバープリントしないとどうなるのでしょうか?
これはスミ文字が使用されている場所にもよります。
背景が白の場合
背景が白の場合はスミ文字はオーバープリントの影響がありませんので、特に気にすることはありません。
背景に色がある場合
背景に色がある場合はスミ文字をオーバープリントしないと、印刷した場合に微細なズレによって版ズレを起こしてしまい、文字が読みづらくなるようなトラブルにも繋がります。
版ズレとは、文字の背景がその形で抜ける事で、見当とよばれる位置合わせが微妙にズレて白が出てしまう現象を言います。またこの様な文字を抜く処理をケヌキ処理と呼んでいます。
見出しタイトルなど文字が大きな場合はズレる心配も少ないですが、説明文のような小さな文字はオーバープリントをしないとズレるおそれがあり、印刷が仕上がった後でトラブルに繋がります。
よって基本的にはスミ文字はオーバープリントをする事が一般的となります。
なるほどですね。スミ文字の細かい文字は背景に重ねる事で、ズレる
リスクを省いてくれますね。
オーバープリントでの注意事項
オーバープリントの意味合いはお分かりでしょうか。
次はオーバープリントをする場合の注意点をご紹介したいと思います。
オーバープリントでの注意事項
●スミ文字以外はオーバープリントの設定をしない
●写真の上にかかるスミ文字やスミ帯(黒のベタ)などは色が透ける
●白文字のオーバープリントチェックは危険
スミ文字以外はオーバープリントの設定をしない
スミ文字は基本的にはオーバープリント処理をするのが一般的であるとご紹介してきました。
それ以外の色文字や色の付いた帯やイラストなどは基本はオーバープリントはされずに、ケヌキの状態で印刷されます。
ただデザイン制作時にAdobeのillustratorやIndesignのアプリケーションで制作される際に、任意でオーバープリントのチェックを入れることができます。そのチェックが入ると、印刷した場合に色が重ねった状態で印刷され、本来と違う色で印刷される事になりますので、注意が必要です。
そうなると、PDFやコピー出力などで校正をしていた内容とが違う色で最終印刷物として仕上がってしまいますので、イメージと異なる印刷物になりますので、トラブルを招いてしまいます。
写真の上に重ねたスミ文字やスミ帯(黒のベタ)などは色が透ける
次にスミ文字やスミの帯などを写真の上に重さねた場合、オーバープリント処理をすると下の写真の影響で透けて見えることがあります。
これもスミ文字が大きかったり、スミのベタ範囲が大きいと目立つことになりますので、視覚的に毛嫌いされる場合もありますので注意が必要となります。
それを避ける場合はスミ100%のベタ濃度だけではなく、他の色を混ぜることで、その文字や帯の部分が他の色が入るためにケヌキ処理となり、重ならないようになります。
またデザイン的によくありますが、スミ文字や帯などの位置が、写真に一部分のみ重なる場合が特に注意が必要です。
これはすべて写真に重なった状態よりも少しややこしく、一部は重なっているために、文字の見え方に違いが出てしまいます。この現象は写真に限らず、illustratorで作成する色帯や、色ベタに重なる場合も同様です。
白文字のオーバープリントチェックは危険
文字を白抜き文字で表現ずる場合も注意が必要です。
画面上やPDFでは白抜き文字が綺麗に表現されていますが、ここにオーバープリントのチェックが入ると文字が何と消えてしまいます。白抜きの文字が背面の文字に対してノセの処理になりますので、結果としては透明の効果になりますので、実際印刷物で確認した場合、文字が消えてなくなるという大惨事になりますので、特に注意が必要となります。
それは…大変ですね…文字が消えるなんて事は
印刷物として成り立たない事になりますね!
入稿時のオーバープリントチェックと解除
オーバープリントのチェックはスミ文字に関しては一般的には印刷会社で製版処理を行う際に自動でオーバープリントのチェックを入れます。
この処理を行うことで、いちいちデザイン制作側でスミ文字のオーバープリントチェックを入れる必要がありません。
印刷物でスミ文字はノセにするのが基本的には常識にもなっていますので、印刷会社や製版会社は皆さん、その認識で印刷物を作成しております。
ただ先程の写真に重なる部分のスミ文字やデザイン制作の意図でオーバープリントのチェックを入れることもあります。
その場合Adobe社のillustratorで作成する際にオーバープリントのチェックポイントをご紹介いたします。
オーバープリントのチェックポイント
illustratorのカラー項目の属性でチェックを確認できます。この時に塗りと線にオーバープリントのチェックを入れる事ができます。
任意でオーバープリントのチェックを入れる事になりますので、意図する箇所でなければ、必要以上にチェックを入れないように注意が必要です。先程紹介しました白抜き文字などが対象の場合はチェックを入れないように注意してください。
オーバープリントのチェック解除
解除する場合も先程の属性の項目でチェックを外すとその部分はオーバープリントされないようになります。
製版や印刷の入稿時にオーバープリントのチェックを行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。また印刷前の製版段階で簡易校正や本紙色校正を行うことで、印刷物を事前にチェックすることも出来ますので、費用と時間に余裕があれば行うほうが良いと思います。
オーバープリントの処理は意図する箇所以外は
基本的には外すようにする方が賢明だと思います。
まとめ
今回は印刷物におけるオーバープリントについてご紹介してきました。
オーバープリント処理は、印刷物の紙面の多くの部分を占めるスミ文字などには効果的な処理となりますが、その他の部分については、基本的にはオーバープリント処理はなしで、ケヌキ処理が基本となります。
おさらいでオーバープリント処理について改めて整理してみました。
●オーバープリント処理はスミ文字が基本で、その他は処理をかけないのが基本
●写真や色ベタ等の上にスミ文字などを重ねる場合は段差や透けを注意する
●白抜き文字等にオーバープリント処理のチェックを入れると文字が消えてしまう
●オーバープリントについてはillustratorの設定で任意にチェックを入れたり、外す事が可能である
●印刷前に、製版工程などで事前にオーバープリント処理が正しくなっているか確認することが大事
以上となります。オーバープリント処理を正しく理解して印刷物を作成していきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。